佐久と西上州を分かつ上信国境に位置する広古屋山。登山記録も多くは見あたらない。山頂は県境からわずかに信州側。佐久側から国道299号を十石峠へ向かい、古谷大橋手前で左折。大上峠を越えて群馬県に入り、南牧村自然公園の駐車場に車をとめる。一隅に岩清水の湧き水が引かれ、余地峠の説明板がある。周囲は桜の花と新緑が美しい。
(左)南牧村自然公園の駐車場。(右)余地峠。左に馬頭観世音。
舗装道を北に向かい、すぐ左の舗装林道へ曲がる。程なく舗装は終わり、山腹を右に巻くように進む。杉桧の植林から、雑木や唐松の新緑へ。尾根を回り込み、林道は左に曲がる。道脇に馬頭尊を見た先で、林道を見送り左折する山道に入る。しばらくして右手に見える林道に合流し、右に巻きながら登れば余地峠に着く。馬頭観世音などが立ち、歴史ある峠道であったことを偲ばせる。
(左)日影山付近の笹原の稜線。(右)1,410北鞍部への下りで篠竹があらわれる。
馬頭観音と「日影山国有林」の看板の間から雑木の尾根上を直登。右手にはジグザグに作業道が上っている。踏み跡は薄いがヤブもない。小ピークを越えると、左・雑木林、右・唐松林の緩やかで明瞭な尾根道になる。少々倒木が煩わしい。1,400m圏ピーク(日影山と呼ばれるらしい)の前後は、笹原が広がり明るい雰囲気。
小ピークをひとつ越え、稜線伝いに右に折れて鞍部に下ると、枯れた篠竹の薮があらわれる。この先、大上峠まで概ね篠竹の中の踏み跡を歩く。1410ピークに向けて、篠竹の踏み跡を登る。1410からは歩きやすい西や南の尾根に入りがちだが、篠竹が鬱陶しい南東側の尾根の方向を見定めて進む。小ピークでやや右に向きを変える前後の右手は針葉樹林。前方、樹間に広古屋山が見える。
(左)矢沢峠の標識。南側から見たところ。(右)地図上の矢沢峠付近。右手(西側)に笹原が広がる。
緩やかに篠竹の中を進むと、小広場に「矢沢峠」の標識。ここは地図上の矢沢峠より少し北。その先、地図上の矢沢峠付近は気持ちよい笹原が広がる。広古屋山へは石がゴロゴロした雑木林の中、踏み跡も不明瞭な急登。傾斜が緩み、右へ進めば広古屋山東肩のピーク。さらに稜線を進めば三角点と山名標がある広古屋山山頂。樹林に囲まれ、木の間から八ヶ岳方面が認められるくらい。しかし、この季節なら樹間からの光が明るい。
(左)広古屋山東肩への急登。(右)樹林の中の広古屋山山頂。
東肩の手前まで戻るとマークがあり、ここが大上峠方面への下り口。篠竹藪の中に続く踏み跡を、急下降。途中、足元に石がゴロゴロしたところが2箇所ほど。吊尾根状の鞍部から登り返し、1308ピークを過ぎて前方左右につながる尾根に登って左折。緩やかに下れば、やがて園地風な疎林(自然樹木園)の中を行くようになり、さまざまな案内板が立つ大上峠に下りつく。
(左)広古屋山東肩西側から大上峠方面へ、マークを見つけ左手前(南東)へ下降する。(右)大上峠へ篠竹の中の踏み跡を下る。
あとは、右手の木の間越しに西上州の山並を見ながら、舗装道を淡々と歩いて自然公園に戻った。はっきりした登山道や案内板はないし、展望が開けるところもない。枯れた篠竹が風景を暗くしているきらいがあるものの、しかし、日影山や矢沢峠付近で笹原が広がる景色は悪くないと思った。当然ながら、途中誰一人にも出会わなかった。

(左)車道が通じる大上峠へ降り立つ。歩いてきた後方には樹木園が広がっている。